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前に進もう…少しずつ。少しずつ。

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12月は演奏会が本当に沢山!
僕も12日のリサイタル(詳細はコチラ)がありますが、いくつかには聴きに行こうと思っています。本当は楽しそうで行きたいものが沢山あるのですが、時間的に難しいし、何より全部行っていたら破産してしまうので。。。心を痛めながら選んでいます。

そんな中で今回聴きにいらして下さる方、選んでいただいて本当にありがとうございます。頑張って準備していますのでお楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!



バロックハープって何?古楽って何?という方にも是非一度お聴きいただけると嬉しいなと思っていますので、今回は少しだけ楽器について紹介したいと思います。

今回わかりやすいように『バロックハープ』リサイタルとタイトルにしていますが、実は『バロックハープ』はとても微妙な名前です。
何故かというと、音楽のバロック時代を指す17世紀~18世紀には他にも色々な形のハープが存在していたからです。
例をいくつかあげると、例えば先日東京芸大の動画で中世の音楽を演奏していた、1列のブレイピン付きの楽器もまだまだ現役でした。

(動画のうちの1本はコチラ↓)


イベリア半島(現スペイン、ポルトガルがある半島)ではR.リバヤスが1677年の教則本『Luz, y norte musical para caminar por las cifras de la guitarra española y arpa, tañer, ...』で弦が2列張られた楽器『2列のハープArpa de dos órdenes』を紹介していたり



ドイツ語圏では『ダヴィドのハープDavids-harfe』という2列の弦を持ち、ブレイピン付きでビリついた音を出す楽器も紹介されていたりします。図は1738年にJ.P.アイゼルが出版した『Musicus autodidactus』のものです。



西洋以外、民族楽器も含めると本当に沢山の種類があったわけなので、『バロック時代に使われたハープ』と一言で言っても、多種多様なものが存在します。
今回のリサイタルで演奏するのは、イタリア語でアルパ・ドッピアArpa doppiaと呼ばれるハープです。
この名前を単語に分解してみると、「アルパArpa」が『ハープ』、「ドッピア」が『2倍の』とか『2重の』という意味を持っています。弦の列が加えられていれば、2列の楽器でも3列の楽器、大きくても小さくてもこの名前で呼ばれていました。
ガット弦(羊の腸が材料)が3列張られていて、両サイドがピアノの白鍵にあたる弦、ドレミファソラシドの音が並び、真ん中に黒鍵に当たる#や♭の弦が並んでいます。曲によっては、一部の音の配置を入れ替える必要がありますが(例えばシの♮と♭を内側と外側で入れ替えるとか)、一応鍵盤楽器と同じ音が全て楽器には揃っています。

響板近くを映すとこんな感じです。見にくいですが矢印で印をしてみました。


ハープで半音を出すためには実は何らかの工夫が必要になるのですが、現代のグランドハープでは足のペダルがその役割を果たしています。

(J.B.ゴーティエ・ダゴティJean-Baptiste Gauthier-Dagoty:「ハープを弾くマリー・アントワネット」1775年)※カラーのものは検索すれば多分沢山出てきます!


例えば上の絵で描かれている18世紀後半に生きたマリー・アントワネットが弾いていたハープには既にペダルがありましたが、それよりも前の時代には、アルパ・ドッピアを含め、弦の数そのものを増やすことで対応しようとする楽器が多く存在していました。

ボローニャに行ったときに撮ったMuseo Civicoの17世紀の3列弦の楽器


こちらはローマのMuseo degli strumenti musicaleが所蔵している豪華な装飾が付けられた3列弦の楽器。大きすぎて、多分上手く撮れてない(笑)

通称『バルベリーニ・ハープL'Arpa Barberini』



イタリア、特にナポリではこの楽器のためのレパートリーがいくつか残っていて、今回のリサイタルでもそのうちの一曲、マイヨーネのリチェルカーレを演奏します。ちなみに、この曲も含め、ナポリの作品は難曲揃いです(苦笑)



イタリアで生まれたこのタイプの楽器は、フランスにも渡りました。M.メルセンヌは1636年に出版された『宇宙の調和Hamonie universelle』第4巻でこの3列弦のハープ(Harpe à trois rang)を紹介していますが、イタリアからもたらされたことや、オラツィオ・ミッキ(メルセンヌはHorace Michiaと書いていますが、Orazio Michiと同一人物)という名手がいたということを書いた後、加えて、
「調弦するのも、曲の最初の音を見つけるのも難しいから、全ての楽器の中で一番難しい」
と説明しています。

その後も、「チェンバロだと白と黒に分かれてるのに、ハープの弦はどれも似たような色してる」とか「速く軽く弾くのが難しい」とか、文句ばっかり(笑)よっぽどこの楽器の構造がショックだったのでしょうか。。。


それでも、フランスでもハーピストは育ったようで、イングランドでは、フランス人のハーピスト、ジャン・ル・フレルJean le Flelleがアルパ・ドッピアを演奏し、1629年にチャールズ1世に『ハープ奏者』として任命されたこと記録が残っています。

実際、イングランドにはその後3列弦の『ウェルシュ・ハープWelsh harp』があり、17世紀から20世紀になってもなお演奏され続けていました。
(楽器の写真は英語のWikipediaからご覧になれます。Welsh telyn deiresの項目をご覧ください→コチラ
この楽器はイタリアのアルパ・ドッピアからの影響を受けているものの、右肩ではなく左肩に楽器を乗せて演奏するという独自の発展を遂げています。英国に帰化したことで有名なヘンデルは、オペラのアリアの中にもハープのパートを書いていますが、ヘンデルの近くにはこのような複数列のあるハープがありました。

「ジュリオ・チェーザレ」1723年の手稿からハープの入ったシンフォニア。スコア全体はこちらから見れます→British Libraryのページ

このシンフォニアも後に手が加えられて、もっとハープらしい書かれ方に変わります。
複数列があると、半音を弾くときには弦と弦の間に指を通さなければいけないので、ヘンデルのオペラのように様々な調が出てくる作品だと、通奏低音の楽器として全体を弾くのおそらく不可能だったと思いますが、ヘンデルの想定していた楽器はペダルのついたハープではなかったと考えられます。
ちなみに、来年になりますが、3月3日と5日ではアントネッロさんのジュリオ・チェーザレに出演し、ハープのついたアリアも演奏する予定です。



楽器について簡単にご紹介しました。
今後も少しだけプログラムの中から演奏動画を載せようかなと思っていますので、ご興味持っていただけましたら是非会場に遊びにいらしてください!






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23日の『小さな楽器の声』、そして26日の試弾会。無事どちらも終了いたしました。

ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。
また色々勉強しつつ、楽しいイベントを作れるよう頑張ります!

皆様また遊びにいらしてくださいね!どちらの企画も続編をご期待ください(#^^#)


23日はお客様として来てくださった高山様が写真を撮ってくださいました。

何枚かUPします!

 
 後輩の尾上愛実ちゃん。お手伝いありがとう!

そしてこちらは試弾会の写真。参加者の皆さん熱心でした。こちらは僕のスマホで撮りましたので、そんなにうまくはありませんが…(笑)

主役の2台
羽軸を使った楽器
デルリンを使った楽器
色々な羽
梅岡さんのレクチャー。皆さん熱心に聴いてらっしゃいました。


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5/26(火)に弾いていただく後期フレンチタイプの楽器。

そのクラヴサン(仏語でチェンバロの意味)の内の1台、タスカンモデル。
『タスカン』とは、ルイ15世、16世の宮廷で名声を得た製作家、パスカル=ジョゼフ・タスカン1Pascal Joseph Taskin(1723 – 1793) のこと。ベルギーのトゥーに生まれ、パリの名工ブランシェ工房で修行を積みました。ブランシェ一家は代々クラヴサンの名工房として栄え、タスカンの師となったフランソワ=エティエンヌ・ブランシェ2François-Étienne Blanchet II (c.1730 - 1766) 1750年代に国王公式のクラヴサン製作家に任命されます。師が36歳で早世した後はタスカンが工房と称号を引き継ぎました。
現存しているタスカンの手によるクラヴサンには、3列のレジスター(2組の8フィートと1組の4フィート)の他に、水牛の皮を爪に使ったもう1組のレジスターpeau de buffleが付けられたもの、演奏中に手を使わず膝ペダルでレジスター操作を出来るようにしたもの等、多彩なシステムが取り入れられています。
また、当時のフランスでは極東の中国や日本から輸入される漆器の人気が高まっており、チェンバロにも漆塗りを模した装飾が施されました(シノワズリー)。タスカンも美しい外観の楽器を製作しています。
以下のリンクから各博物館のページに飛べます。写真も見ることが出来ますので、是非!

①ハンブルクの美術工芸博物館Museum für Kunst und Gewerbe所蔵の楽器
こちらは1787年製。シノワズリーが施され、膝ペダルも付けられています。

②パリの音楽博物館所蔵Musée de la musiqueの楽器
こちらは1646年製のリュッカースチェンバロを1756年にブランシェ、1780年にタスカンが改造Ravalementした楽器。

1786年製の一段鍵盤楽器。美しいシノワズリーの楽器

どなたでも参加可能ですので、是非お越しください!詳細はこちらから

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5/23(土)『小さな楽器の声』楽器紹介最終回はリコーダー。 

リコーダーは紆余曲折があって今小中学校で吹かれていますが、実は歴史は結構深いのです。
一番最初にはっきりとその存在が確認できるのは1315年頃に書かれたフレスコ画『キリストの嘲弄』ということになっています。マケドニアのクマノヴォという町にある聖ゲオルグ教会に所蔵してあります。こちらのURLから見れます。
http://www.recorderhomepage.net/wp-content/uploads/images/astrapas+eutychios_mocking_1.jpg

14世紀の現存している楽器がいくつかあり、最近でも2005年にエストニアのタルトゥ遺跡から見つかったようです。肥溜め(トイレ)から見つあったそうで、保存状態が良く発音も可能。2オクターブ+2音の音域をもつ楽器だそうです。それにしても肥溜めって…なぜそんなところから…


もちろん今回使う楽器とは違うのですが、一応参考までに。
リコーダー、というか縦笛は色々な絵、文献によく出てくるのですが、本当に形もバラエティに富んでおり、中々確たる証拠を得るのは難しいです。

今回お聴きいただくリコーダー。現在『ガナッシリコーダー』と呼ばれているタイプのものを2本演奏します。下側の楽器は平尾重治氏、上側は平尾清治氏製作。

2分割でその間を金属のリングで止めています。
ガナッシとはリコーダーについて書いた現在確認される最古の教則本、『フォンテガーラ』の著者である、シルヴェストロ・ガナッシ(1492~1557)
こちらからファクシミリがダウンロード可能http://imslp.org/wiki/Opera_Intitulata_Fontegara_(Ganassi,_Sylvestro)

実際モデルとなった楽器はこちら。モデルとなったというよりはこちらの楽器から着想を得て現代の製作者が作り出したもののようです。

もとになったこちらの楽器は現在ウィーンの美術史美術館に所蔵されています。
実際この元になった楽器と、現代のガナッシリコーダーと、音色にどんな違いがあるのか…いつか聞いてみたいものです…。

以上3種類の楽器の音色をお楽しみいただきます。
是非是非、お聴きくださいね!
5/23この演奏会の情報はこちら
まだ残席ありますので、チケットご希望の方はお早目にこちらのアドレスまで。bouquet_de_trio@yahoo.co.jp (曽根田)
また、他2つの楽器情報はこちらから→スピネッティーナ 。ハープ

では会場でお待ちしています!




 
 
 

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コンサート『小さな楽器の声』のほうも楽器紹介を行っていますが、5/26(金)の夕方にはチェンバロの試弾会があります。

イベント詳細はこちら↓
http://hayaononikki.syoyu.net/%E6%BC%94%E5%A5%8F%E4%BC%9A/%E9%B3%A5%E3%81%AE%E7%BE%BD%E3%81%A8%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%BC%BE%E3%81%8D%E6%AF%94%E3%81%B9

その時に使用する楽器を少し紹介いたします。

こちらは鳥の羽を爪に使用した楽器。
〇フレンチモデル 
 2段鍵盤チェンバロ

 18世紀モデル
   (特定のモデルは無し)
 2段鍵盤  8×8×4f  
 音域 FF ~ g3  
 バフストップ付(上鍵盤)
 ピッチ 3段階可変
  (392/415/440)
 鳥の羽使用  
製作者 RYO YOSHIDA 
 クラブサン・ビヤン・タンペレ社 
    (フランス)  1992年作


こちらはデルリンという合成樹脂を爪に使用した楽器。

〇フレンチモデル 
 2段鍵盤チェンバロ

 P・TASKAN モデル
 2段鍵盤  8×8×4f  
 音域 FF ~f 3  
 バフストップ付(上鍵盤)
 ピッチ 2段階可変
  (415/440)  
製作者 MATTHIAS KRAMER 
     (ドイツ)  2002年作 

こちらのイベントはどなたでも参加いただけます。実際にチェンバロを二台並べて試奏できる機会はそう多くは無いので、是非この機会にご参加ください!

ご興味がある方は
bouquet_de_trio@yahoo.co.jp(曽根田)またはumeoka-gakki@nifty.com(梅岡)
までご連絡ください!

5/23『小さな楽器の声』もまだお席ございますので、どちらのイベントも是非!

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プロフィール

HN:
曽根田 駿 Soneda Hayao
年齢:
31
性別:
男性
誕生日:
1992/08/31
職業:
チェンバロ、古楽ハープ弾き
自己紹介:
愛媛県松山市出身。
4歳からピアノを始める。
松山南高等学校在学中、チェンバロに出会い転向する。

東京芸術大学音楽学部器楽科チェンバロ専攻卒業。在学中、2年次よりバロックダンス部の部長を務める。
2015年より渡仏し、リヨン国立高等音楽院CNSMDLのチェンバロ専攻学士課程に在学。2018年6月に演奏家ディプロマDNSPMを取得した。
2018年9月より、同校のクラヴサン―通奏低音専攻修士課程、及び古楽ハープ学士課程在学。

ピアノを冨永啓子氏、チェンバロを石川陽子、大塚直哉、西山まりえ、Y.レヒシュタイナー、J-M.エイム、D.ベルナーの各氏に師事。
古楽ハープを西山まりえ、A.モイヨンの各氏に師事。

2014年3月に初のソロリサイタルを萬翠荘(愛媛)にて開催。
2015年3月には『ハープ祭り2015(西山まりえ氏主宰)』において、『プチっとリサイタル』に選出され、ゴシックハープで出演する。
東京芸大在学中より様々なアンサンブルとも共演し、ソロ、通奏低音共に研鑽を積んでいる。

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