pas à pas
前に進もう…少しずつ。少しずつ。
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ちょこっとプログラム紹介、その1(中編)です!
引き続き、8月24日のリコーダーリサイタルで演奏するデュパールについて紹介したいと思います!
本当は「後編」にして終わらせる予定だったのですが、なんか書き始めたらえらいボリュームになってしまったので「中編」にタイトルを変更しました(^-^;
前回の記事の続きになるので、まだ前編を読まれていない方はコチラからどうぞ!
ここからは今回演奏する曲について触れていきます。
―組曲の構成―
この曲集の組曲は全て序曲から始まって、6つの舞曲が続く7つの曲で構成されています。
この曲集の珍しい点としては、まず序曲で始まっているところです。クラヴサンのための組曲のド頭に序曲がくるものは多くありません。
そして、組曲の構成が、「序曲+6つの舞曲」という形で統一されているのも実はレアなのです。
バッハはある程度一貫性を持ってフランス組曲、イギリス組曲、パルティータを残していますが、多くのクラヴサン作品集はそれぞれの組曲で、様々に構成されています。
例えばJ.-H.ダングルベールのクラヴサン曲集(1689.パリ)は
第1組曲
前奏曲
アルマンド
3つのクーラント
サラバンド
2つのジーグ
ガリアルド
シャコンヌ
ガヴォット
メヌエット
…前奏曲+11の舞曲という構成になっているのに対し、続く第2組曲は
前奏曲
アルマンド
2つのクーラント
サラバンド
ジーグ
ガリアルド
パッサカイユ
…前奏曲+7つの舞曲という全く違い構成になっています。
この時代の組曲集は、チェンバロ用の物も他の楽器のためのものも、概して「全部続けて演奏するためのもの」では無く、ただ同じ調性のものを集めただけのもの(一部例外あり!)なのですが、デュパールの組曲集はがっちりと統一感ある形に仕上げられています。
―クラヴサン(チェンバロ)版と器楽合奏版を比べてみると?―
デュパールのこの組曲集は、前回書いた通り、クラヴサン版と器楽版の2つがあります。
今回演奏する第2組曲のアルマンドの前半パートを比べてみましょう。
クラヴサン版はこちら。
(※左手の音部記号がF3(バリトン記号と同じ読み方)ですが、今の大譜表と同じように基本的には右手が上、左手が下です。)
そして器楽版のパート譜がこちら。
旋律楽器パート譜
通奏低音パート譜
クラヴサンの右手と旋律楽器パート、左手と通奏低音パート、それぞれ見比べてみてください。
・右手と旋律楽器声部
クラヴサン版の右手には彼の装飾音表に従った装飾音がたっぷり付けられているのに対して、旋律楽器用のパート譜には何も書かれていません。
ちなみにこの曲集に付属されている、装飾音表がこちら。
旋律楽器のパート譜に何も書かれていないからと言って、何の装飾音も付けなくてOKというわけではありません。もちろん、旋律は綺麗ですが、この時代の多くの理論書で言われているように、「適切な位置に適切な装飾音をつける」必要があります。とはいえ、当時の人たちにとって「適切な」ってどうやって知るのでしょうか。
例えばJ.-M.オトテールは1707年に出版された自身の教則本「横笛、縦笛、オーボエの基礎Principes de la flûte traversière, de la flûte à bec, et du haut-bois」で
「(装飾音の規則を)全部教えるのは難しい。理論書よりも”実践”と”趣味”が大事だから、まずは装飾音が全部書かれている曲を勉強してね」(画像赤線の部分の要約)と言っています。
例えば2つ以上音がある和音に関する装飾は、単旋律楽器では付けられませんが、
上から数えて7つ目までの装飾なら単旋律楽器でも付けられますよね。
「鍵盤用の装飾を他の楽器でまで適用して良いのかな」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は17世紀18世紀は、「○○専用の曲」という縛りが甘く、タイトルに書かれていなくても、指定された楽器以外で弾くことも多かったことが推測できます。
同じくオトテールのフルート用の作品集Op.2(1689)では
「フルート用に書いたけど、どの楽器で弾いても良いよ…いくつかはクラヴサンで弾いても良いけど、その時は片手で高音声部、もう片方で低音声部を弾いてね(要約)」と書いています。
また、F.クープランの2つのコンセール集(1722&1724)はどちらも、あらゆる楽器で演奏できるように書かれており、クラヴサン曲と同じ装飾音を用いて高音楽器声部、バス声部が書かれています。
王宮のコンセール第1番(1722.パリ)
クラヴサン曲集第1巻(1713.パリ)の装飾音表
こういった配慮は、プロの音楽家でなくても、王族、貴族、お金持ち達が自分の演奏できる楽器で音楽を楽しめるようにという意図があるように思いますが、演奏する楽器に関わらず、ある程度の趣味や教養といった、ある程度の音楽の「語彙」みたいな物は共通していたのではということも推測できます。
特にクラヴサン用の曲は、他の楽器の物に比べて装飾音の数も種類も豊富なので、旋律楽器を演奏する人はデュパールのような曲は、装飾音の勉強にもピッタリかなと思います。
書き始めたら細かく書きたくなって、予想外のボリュームになってしまったので、後編に続きます(-_-;)
引き続き、8月24日のリコーダーリサイタルで演奏するデュパールについて紹介したいと思います!
本当は「後編」にして終わらせる予定だったのですが、なんか書き始めたらえらいボリュームになってしまったので「中編」にタイトルを変更しました(^-^;
前回の記事の続きになるので、まだ前編を読まれていない方はコチラからどうぞ!
ここからは今回演奏する曲について触れていきます。
―組曲の構成―
この曲集の組曲は全て序曲から始まって、6つの舞曲が続く7つの曲で構成されています。
この曲集の珍しい点としては、まず序曲で始まっているところです。クラヴサンのための組曲のド頭に序曲がくるものは多くありません。
そして、組曲の構成が、「序曲+6つの舞曲」という形で統一されているのも実はレアなのです。
バッハはある程度一貫性を持ってフランス組曲、イギリス組曲、パルティータを残していますが、多くのクラヴサン作品集はそれぞれの組曲で、様々に構成されています。
例えばJ.-H.ダングルベールのクラヴサン曲集(1689.パリ)は
第1組曲
前奏曲
アルマンド
3つのクーラント
サラバンド
2つのジーグ
ガリアルド
シャコンヌ
ガヴォット
メヌエット
…前奏曲+11の舞曲という構成になっているのに対し、続く第2組曲は
前奏曲
アルマンド
2つのクーラント
サラバンド
ジーグ
ガリアルド
パッサカイユ
…前奏曲+7つの舞曲という全く違い構成になっています。
この時代の組曲集は、チェンバロ用の物も他の楽器のためのものも、概して「全部続けて演奏するためのもの」では無く、ただ同じ調性のものを集めただけのもの(一部例外あり!)なのですが、デュパールの組曲集はがっちりと統一感ある形に仕上げられています。
―クラヴサン(チェンバロ)版と器楽合奏版を比べてみると?―
デュパールのこの組曲集は、前回書いた通り、クラヴサン版と器楽版の2つがあります。
今回演奏する第2組曲のアルマンドの前半パートを比べてみましょう。
クラヴサン版はこちら。
(※左手の音部記号がF3(バリトン記号と同じ読み方)ですが、今の大譜表と同じように基本的には右手が上、左手が下です。)
そして器楽版のパート譜がこちら。
旋律楽器パート譜
通奏低音パート譜
クラヴサンの右手と旋律楽器パート、左手と通奏低音パート、それぞれ見比べてみてください。
・右手と旋律楽器声部
クラヴサン版の右手には彼の装飾音表に従った装飾音がたっぷり付けられているのに対して、旋律楽器用のパート譜には何も書かれていません。
ちなみにこの曲集に付属されている、装飾音表がこちら。
旋律楽器のパート譜に何も書かれていないからと言って、何の装飾音も付けなくてOKというわけではありません。もちろん、旋律は綺麗ですが、この時代の多くの理論書で言われているように、「適切な位置に適切な装飾音をつける」必要があります。とはいえ、当時の人たちにとって「適切な」ってどうやって知るのでしょうか。
例えばJ.-M.オトテールは1707年に出版された自身の教則本「横笛、縦笛、オーボエの基礎Principes de la flûte traversière, de la flûte à bec, et du haut-bois」で
「(装飾音の規則を)全部教えるのは難しい。理論書よりも”実践”と”趣味”が大事だから、まずは装飾音が全部書かれている曲を勉強してね」(画像赤線の部分の要約)と言っています。
例えば2つ以上音がある和音に関する装飾は、単旋律楽器では付けられませんが、
上から数えて7つ目までの装飾なら単旋律楽器でも付けられますよね。
「鍵盤用の装飾を他の楽器でまで適用して良いのかな」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は17世紀18世紀は、「○○専用の曲」という縛りが甘く、タイトルに書かれていなくても、指定された楽器以外で弾くことも多かったことが推測できます。
同じくオトテールのフルート用の作品集Op.2(1689)では
「フルート用に書いたけど、どの楽器で弾いても良いよ…いくつかはクラヴサンで弾いても良いけど、その時は片手で高音声部、もう片方で低音声部を弾いてね(要約)」と書いています。
また、F.クープランの2つのコンセール集(1722&1724)はどちらも、あらゆる楽器で演奏できるように書かれており、クラヴサン曲と同じ装飾音を用いて高音楽器声部、バス声部が書かれています。
王宮のコンセール第1番(1722.パリ)
クラヴサン曲集第1巻(1713.パリ)の装飾音表
こういった配慮は、プロの音楽家でなくても、王族、貴族、お金持ち達が自分の演奏できる楽器で音楽を楽しめるようにという意図があるように思いますが、演奏する楽器に関わらず、ある程度の趣味や教養といった、ある程度の音楽の「語彙」みたいな物は共通していたのではということも推測できます。
特にクラヴサン用の曲は、他の楽器の物に比べて装飾音の数も種類も豊富なので、旋律楽器を演奏する人はデュパールのような曲は、装飾音の勉強にもピッタリかなと思います。
書き始めたら細かく書きたくなって、予想外のボリュームになってしまったので、後編に続きます(-_-;)
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プロフィール
HN:
曽根田 駿 Soneda Hayao
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/08/31
職業:
チェンバロ、古楽ハープ弾き
自己紹介:
愛媛県松山市出身。
4歳からピアノを始める。
松山南高等学校在学中、チェンバロに出会い転向する。
東京芸術大学音楽学部器楽科チェンバロ専攻卒業。在学中、2年次よりバロックダンス部の部長を務める。
2015年より渡仏し、リヨン国立高等音楽院CNSMDLのチェンバロ専攻学士課程に在学。2018年6月に演奏家ディプロマDNSPMを取得した。
2018年9月より、同校のクラヴサン―通奏低音専攻修士課程、及び古楽ハープ学士課程在学。
ピアノを冨永啓子氏、チェンバロを石川陽子、大塚直哉、西山まりえ、Y.レヒシュタイナー、J-M.エイム、D.ベルナーの各氏に師事。
古楽ハープを西山まりえ、A.モイヨンの各氏に師事。
2014年3月に初のソロリサイタルを萬翠荘(愛媛)にて開催。
2015年3月には『ハープ祭り2015(西山まりえ氏主宰)』において、『プチっとリサイタル』に選出され、ゴシックハープで出演する。
東京芸大在学中より様々なアンサンブルとも共演し、ソロ、通奏低音共に研鑽を積んでいる。
にほんブログ村
4歳からピアノを始める。
松山南高等学校在学中、チェンバロに出会い転向する。
東京芸術大学音楽学部器楽科チェンバロ専攻卒業。在学中、2年次よりバロックダンス部の部長を務める。
2015年より渡仏し、リヨン国立高等音楽院CNSMDLのチェンバロ専攻学士課程に在学。2018年6月に演奏家ディプロマDNSPMを取得した。
2018年9月より、同校のクラヴサン―通奏低音専攻修士課程、及び古楽ハープ学士課程在学。
ピアノを冨永啓子氏、チェンバロを石川陽子、大塚直哉、西山まりえ、Y.レヒシュタイナー、J-M.エイム、D.ベルナーの各氏に師事。
古楽ハープを西山まりえ、A.モイヨンの各氏に師事。
2014年3月に初のソロリサイタルを萬翠荘(愛媛)にて開催。
2015年3月には『ハープ祭り2015(西山まりえ氏主宰)』において、『プチっとリサイタル』に選出され、ゴシックハープで出演する。
東京芸大在学中より様々なアンサンブルとも共演し、ソロ、通奏低音共に研鑽を積んでいる。
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