pas à pas
前に進もう…少しずつ。少しずつ。
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8月にはせっかく日本で演奏会があるので、少しずつプログラムの紹介をしようかなと思います。
「その1」とか書いちゃいましたが、
面倒になってこれが最終回になってしまわないように頑張ります(苦笑)
今日は8月24日にあるリコーダーリサイタルで演奏する、
シャルル・デュパール Charles Dieupart(1667 ?– 1740)
の組曲について書こうと思います。
―デュパールについて―
デュパールはパリ生まれだったと言われていますが、ロンドンで活動した音楽家です。
最初のロンドン近郊の街ドルリー・レーンDurly Laneでの演奏会の記録が1703年、その頃からチェンバロ奏者、ヴァイオリン奏者として活動したようです。
J.B.ボノンチーニBononcini、A.スカルラッティなどイタリア語圏の作曲家の作品の他、現存しない自作の英語のマスク(劇場のための作品)、器楽曲など様々な演目を演奏していたようです。
曲目を見ると、18世紀のロンドンには多様で豊かな文化的な土壌があったことがわかりますね。
さて、今回演奏するのは1701年にアムステルダムで出版された6つの組曲の中の第2組曲です。
―曲集の表紙―
表紙はこちら。(画質悪くてごめんなさい!画像をクリックしていただければ拡大できます)
まずはこの表紙を見てみましょう。
ご覧のように最初の出版は、「6つの’クラヴサン(チェンバロ)の組曲’」
として出版されています。
続いて「序曲、アルマンド、クーラント…ジーグ」と組曲を構成している楽曲名が書かれているのですが、その後に「Composé & Mises en concert par Monsieur Dieupart」と書かれています。
「デュパール氏によって作曲され」までは良いのですが、この後に続く「Mises en concert」って日本語には訳しにくいのです!
「コンセールConcertの状態にされた」くらいでしょうか。
この時代にはフランスで「コンセール」と題された合奏作品のジャンルがあり、それを現すように、作曲者の氏名の後、
「ヴァイオリンとフルートのために、バス・ド・ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)とアーチリュートを伴なってPour un violon & flùte avec une Basse de Viole & un Archilut」
と書かれています。
実はこの曲集、チェンバロソロ+旋律楽器パート譜+通奏低音パート譜という、あまり見られない形で販売されていました。
また、この初版では通奏低音の楽器にバス・ド・ヴィオールとアーチリュートが指定されていますが、1702年に器楽版が再版された際には「Mises en concert」が消えると共に、
「1つの通奏低音を伴ったフルート、またはヴァイオリンで演奏するのがおススメ!(赤線の所)」と変更されています。
このときには、クラヴサン版と器楽版が別々で販売されました。
「売れたからさらに儲けてやろう!」なんて意図もあるかもしれませんね(笑)
そして、一番下に
「サンドウィッチ伯爵夫人へ捧ぐDédiées à Madame la comtesse de Sandwich 」
という献呈相手の名前
「アムステルダム、出版者E.ロジェにて。A Amsterdam Chez Estienne Roger Marchand libraire」という出版情報が続いています。
―曲について―
・リコーダーの管の指定
では曲を見て見ましょう。
今回演奏するの第2組曲(ニ長調)です。
ちなみに、曲集全体の構成は
第1組曲(イ長調)
第2組曲(ニ長調)
第3組曲(ロ短調)
第4組曲(ホ短調)
第5組曲(ヘ長調)
第6組曲(ヘ短調)
となっています。#が3つ付く第1組曲と♭が4つ付く(出版譜にはシ♭ミ♭ラ♭の3つしか付いていません)第6組曲。調律でどうにかなるチェンバロやヴァイオリンはともかく、表紙でデュパール本人、または出版社がおススメしているフルートは、音域が限られているため当然使用する管の問題が出てきます。
しかし、この曲集はちゃんと管楽器奏者へも配慮されています。
第2組曲の冒頭の指示がコチラ
「この組曲はヴォイス・フルートのヘ長調(の指使い)で演奏されなければならない
Cette suitte se doit jouer en f ut fa sur une flute de voix(※f ut faという表記はソルミゼーションの名残だと思われます)
ヴォイス・フルートはD管のリコーダーのことです。
右がアルト(F管)、左がヴォイス・フルートです。普通のアルトと比べるとちょっと大きめ。
このように第1~第4組曲はヴォイス・フルート、残りの2つは「4度フルートflûte du quarte(B管)」が指定されています。ちなみに、ヴォイス・フルートのレプリカは良く見ますが、この4度フルートのレプリカは僕はまだお目にかかったことがありません…。
当時は今よりも楽器の形や管にバラエティがあったという、1つの証拠ですね。
……疲れた(-_-;)
というわけで本当は曲についてももうちょっと触れたかったのですが、
全然「ちょこっと」紹介ではなくなってしまったので、それは次回に。
今日は8月24日「中島恵美リコーダーリサイタル」@近江楽堂で取り上げる、デュパールについての紹介(前編)でした。
「その1」とか書いちゃいましたが、
面倒になってこれが最終回になってしまわないように頑張ります(苦笑)
今日は8月24日にあるリコーダーリサイタルで演奏する、
シャルル・デュパール Charles Dieupart(1667 ?– 1740)
の組曲について書こうと思います。
―デュパールについて―
デュパールはパリ生まれだったと言われていますが、ロンドンで活動した音楽家です。
最初のロンドン近郊の街ドルリー・レーンDurly Laneでの演奏会の記録が1703年、その頃からチェンバロ奏者、ヴァイオリン奏者として活動したようです。
J.B.ボノンチーニBononcini、A.スカルラッティなどイタリア語圏の作曲家の作品の他、現存しない自作の英語のマスク(劇場のための作品)、器楽曲など様々な演目を演奏していたようです。
曲目を見ると、18世紀のロンドンには多様で豊かな文化的な土壌があったことがわかりますね。
さて、今回演奏するのは1701年にアムステルダムで出版された6つの組曲の中の第2組曲です。
―曲集の表紙―
表紙はこちら。(画質悪くてごめんなさい!画像をクリックしていただければ拡大できます)
まずはこの表紙を見てみましょう。
ご覧のように最初の出版は、「6つの’クラヴサン(チェンバロ)の組曲’」
として出版されています。
続いて「序曲、アルマンド、クーラント…ジーグ」と組曲を構成している楽曲名が書かれているのですが、その後に「Composé & Mises en concert par Monsieur Dieupart」と書かれています。
「デュパール氏によって作曲され」までは良いのですが、この後に続く「Mises en concert」って日本語には訳しにくいのです!
「コンセールConcertの状態にされた」くらいでしょうか。
この時代にはフランスで「コンセール」と題された合奏作品のジャンルがあり、それを現すように、作曲者の氏名の後、
「ヴァイオリンとフルートのために、バス・ド・ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)とアーチリュートを伴なってPour un violon & flùte avec une Basse de Viole & un Archilut」
と書かれています。
実はこの曲集、チェンバロソロ+旋律楽器パート譜+通奏低音パート譜という、あまり見られない形で販売されていました。
また、この初版では通奏低音の楽器にバス・ド・ヴィオールとアーチリュートが指定されていますが、1702年に器楽版が再版された際には「Mises en concert」が消えると共に、
「1つの通奏低音を伴ったフルート、またはヴァイオリンで演奏するのがおススメ!(赤線の所)」と変更されています。
このときには、クラヴサン版と器楽版が別々で販売されました。
「売れたからさらに儲けてやろう!」なんて意図もあるかもしれませんね(笑)
そして、一番下に
「サンドウィッチ伯爵夫人へ捧ぐDédiées à Madame la comtesse de Sandwich 」
という献呈相手の名前
「アムステルダム、出版者E.ロジェにて。A Amsterdam Chez Estienne Roger Marchand libraire」という出版情報が続いています。
―曲について―
・リコーダーの管の指定
では曲を見て見ましょう。
今回演奏するの第2組曲(ニ長調)です。
ちなみに、曲集全体の構成は
第1組曲(イ長調)
第2組曲(ニ長調)
第3組曲(ロ短調)
第4組曲(ホ短調)
第5組曲(ヘ長調)
第6組曲(ヘ短調)
となっています。#が3つ付く第1組曲と♭が4つ付く(出版譜にはシ♭ミ♭ラ♭の3つしか付いていません)第6組曲。調律でどうにかなるチェンバロやヴァイオリンはともかく、表紙でデュパール本人、または出版社がおススメしているフルートは、音域が限られているため当然使用する管の問題が出てきます。
しかし、この曲集はちゃんと管楽器奏者へも配慮されています。
第2組曲の冒頭の指示がコチラ
「この組曲はヴォイス・フルートのヘ長調(の指使い)で演奏されなければならない
Cette suitte se doit jouer en f ut fa sur une flute de voix(※f ut faという表記はソルミゼーションの名残だと思われます)
ヴォイス・フルートはD管のリコーダーのことです。
右がアルト(F管)、左がヴォイス・フルートです。普通のアルトと比べるとちょっと大きめ。
このように第1~第4組曲はヴォイス・フルート、残りの2つは「4度フルートflûte du quarte(B管)」が指定されています。ちなみに、ヴォイス・フルートのレプリカは良く見ますが、この4度フルートのレプリカは僕はまだお目にかかったことがありません…。
当時は今よりも楽器の形や管にバラエティがあったという、1つの証拠ですね。
……疲れた(-_-;)
というわけで本当は曲についてももうちょっと触れたかったのですが、
全然「ちょこっと」紹介ではなくなってしまったので、それは次回に。
今日は8月24日「中島恵美リコーダーリサイタル」@近江楽堂で取り上げる、デュパールについての紹介(前編)でした。
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プロフィール
HN:
曽根田 駿 Soneda Hayao
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/08/31
職業:
チェンバロ、古楽ハープ弾き
自己紹介:
愛媛県松山市出身。
4歳からピアノを始める。
松山南高等学校在学中、チェンバロに出会い転向する。
東京芸術大学音楽学部器楽科チェンバロ専攻卒業。在学中、2年次よりバロックダンス部の部長を務める。
2015年より渡仏し、リヨン国立高等音楽院CNSMDLのチェンバロ専攻学士課程に在学。2018年6月に演奏家ディプロマDNSPMを取得した。
2018年9月より、同校のクラヴサン―通奏低音専攻修士課程、及び古楽ハープ学士課程在学。
ピアノを冨永啓子氏、チェンバロを石川陽子、大塚直哉、西山まりえ、Y.レヒシュタイナー、J-M.エイム、D.ベルナーの各氏に師事。
古楽ハープを西山まりえ、A.モイヨンの各氏に師事。
2014年3月に初のソロリサイタルを萬翠荘(愛媛)にて開催。
2015年3月には『ハープ祭り2015(西山まりえ氏主宰)』において、『プチっとリサイタル』に選出され、ゴシックハープで出演する。
東京芸大在学中より様々なアンサンブルとも共演し、ソロ、通奏低音共に研鑽を積んでいる。
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4歳からピアノを始める。
松山南高等学校在学中、チェンバロに出会い転向する。
東京芸術大学音楽学部器楽科チェンバロ専攻卒業。在学中、2年次よりバロックダンス部の部長を務める。
2015年より渡仏し、リヨン国立高等音楽院CNSMDLのチェンバロ専攻学士課程に在学。2018年6月に演奏家ディプロマDNSPMを取得した。
2018年9月より、同校のクラヴサン―通奏低音専攻修士課程、及び古楽ハープ学士課程在学。
ピアノを冨永啓子氏、チェンバロを石川陽子、大塚直哉、西山まりえ、Y.レヒシュタイナー、J-M.エイム、D.ベルナーの各氏に師事。
古楽ハープを西山まりえ、A.モイヨンの各氏に師事。
2014年3月に初のソロリサイタルを萬翠荘(愛媛)にて開催。
2015年3月には『ハープ祭り2015(西山まりえ氏主宰)』において、『プチっとリサイタル』に選出され、ゴシックハープで出演する。
東京芸大在学中より様々なアンサンブルとも共演し、ソロ、通奏低音共に研鑽を積んでいる。
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